曹洞宗の葬儀とは?特徴や葬儀の流れ、マナーを解説します

曹洞宗は禅宗と呼ばれる宗派で、他の仏教宗派とは異なる独特の儀式やマナーがあります。

実際にご家族が亡くなられた際「曹洞宗の葬儀の準備はどうすればいい?」「曹洞宗のマナーの違いは?」と思われる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、曹洞宗の葬儀の特徴や流れやマナーについて解説します。ぜひ参考にご一読ください。

目次

曹洞宗とは

曹洞宗は、鎌倉時代に日本に伝わった禅宗の一派で、道元禅師によって開かれました。この宗派は、坐禅を中心とした修行を重んじ、日常生活そのものを修行の場とする教えを持っています。

曹洞宗では、「只管打坐(しかんたざ)」と呼ばれる、ただひたすらに坐禅を組むことで心を統一し、悟りに至ることを目指します。

この宗派の特徴は、儀式や形式に捉われず、日々の生活の中で悟りを求めるのが特徴です。

曹洞宗と他宗派との違い

曹洞宗の葬儀は、葬儀の流れや使用される道具、お経の選び方に独自の特徴があります。

例えば、曹洞宗の葬儀では、シンバルを含む特定の仏具が使用され、故人の魂を清め、悟りへと導く儀式が行われます。また、曹洞宗独自のお経は、故人が生前に学んだ教えや、その人の精神性を反映しています。

曹洞宗での葬儀の特徴

曹洞宗での葬儀は、独特な宗教的背景と精神性に基づいた厳かな儀式で知られており「授戒」と「引導」の儀式が中心となります。

授戒儀式では、故人が仏弟子として新たな旅立ちをするための準備を行い、引導儀式では故人の魂を悟りの世界へと導くための祈りが捧げられます。

また、曹洞宗独特の仏具であるシンバルをはじめとする楽器を用いた「鼓鈸三通」の演奏を行い、最後の送りとしての役割を果たします。

曹洞宗の流れ【葬儀】

曹洞宗の葬儀は以下の流れに沿って執り行われます。

曹洞宗の剃髪(ていはつ)の儀式

剃髪(ていはつ)の儀式は、故人が仏弟子として新たな旅立ちをするための準備として、象徴的に髪を剃る行為を行います。

実際に髪を剃るわけではなく、導師が剃刀で故人の髪を剃る真似をし、世俗からの解放と精神的な浄化を象徴します。

曹洞宗の授戒

授戒は、故人を正式に仏弟子として迎え入れるための儀式です。故人に対して仏教の戒律が授けられます。

授戒儀式は、故人が生前に犯した可能性のある過ちを懺悔し、清らかな心で悟りの道を歩む準備が整ったことを示します。

この儀式により、故人は仏の教えに従う仏弟子として、次の世界へと旅立つ準備が整えられます。

曹洞宗の入棺諷経(にゅうかんふぎん)

入棺諷経(にゅうかんふぎん)は、故人を棺に納め、その魂を慰めるためのお経を唱える儀式です。導師は「大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)」と「回向文(えこうもん)」を読経します。

曹洞宗の龕前念誦(がんぜんねんじゅ)

龕前念誦(がんぜんねんじゅ)は、棺を閉じる際に導師が読み上げる読経です。導師は「回向文(えこうもん)」と「十仏(じゅうぶつみょう)」を唱えます。

曹洞宗の挙龕念誦(こがんねんじゅ)

挙龕念誦(こがんねんじゅ)は、棺の前で行われる読経です。導師は「回向文(えこうもん)」と「大宝楼閣陀羅尼(だいほうろうかくだら)」を唱えます。

さらに、太鼓や鐃祓(にょうはち)を使って打ち鳴らす儀式、「鼓鈸三通(くはつさんつう)」を行い、邪気を払い清めます。

曹洞宗の引導法語

引導法語は、故人の魂を悟りの世界へと導くための言葉を導師が述べる儀式です。松明(たいまつ)を模したものを用いて、円を描いて故人を悟りの世界へ導きます。

曹洞宗の山頭念誦(さんとうねんじゅ)

山頭念誦(さんとうねんじゅ)は、故人の魂が悟りの世界へと安全に旅立つことを祈る儀式です。山頭とは火葬場や墓地を意味しており、火葬場へ向かうまでに行われます。

曹洞宗の出棺(導師の退場)

導師が退場したら、喪主が参列者に対して感謝の意を述べ、出棺となります。

曹洞宗のお布施【喪主向け】

曹洞宗におけるお布施の書き方や相場について解説します。

お布施の書き方

お布施の表書きは「御布施」や「戒名料」と明記し、その下に喪主や家族の名前を記入します。また、中袋や外包み裏に、住所や氏名、額面を記載することが一般的です。

お布施の相場

曹洞宗の葬儀におけるお布施の相場は、地域や寺院、葬儀の規模によって異なりますが、一般的には20万円から60万円程度が目安とされています。

主に行われる儀式の内容や、導師の数によっても変動します。例えば、葬儀だけでなく法事なども含めた場合、または複数の導師による読経がある場合は、それに応じてお布施の額も増えます。

曹洞宗の葬儀で注意すべきマナー

曹洞宗の葬儀では、他とは異なる特有のマナーや作法が存在しますので、押えておきましょう。

曹洞宗の香典について

曹洞宗の葬儀における香典の包み方や相場について解説します。

曹洞宗の香典の包み方

曹洞宗の香典の包み紙は一般的な不祝儀袋と同じです。新札は使わず、旧札を包むのが一般的となります。

曹洞宗の香典の表書き

香典の表書きには「御香典」と書き、その下に贈る人の氏名を記入します。中袋に住所や名前、金額を記載します。

曹洞宗の香典の相場

曹洞宗の葬儀における香典の相場は、一般的な葬儀と同じで以下の通りとなります。

故人と関係金額
近親者3万円から5万円
親族1万円から3万円
友人・知人5千円から1万円
職場の同僚・上司3千円から1万円

曹洞宗の焼香のやり方

曹洞宗における焼香の手順は以下の通りです。

  • 焼香台に近づく:静かに焼香台の前に進みます。
  • 合掌して一礼:焼香台の前で手を合わせ、故人に対して深く一礼します。
  • 線香を取る:線香を適切な数(通常は一本)取ります。
  • 線香に火をつける:既に燃えている線香の炎を使って、新しい線香に火をつけます。
  • 線香の火を消す:線香の火は、息を吹きかけるのではなく、軽く振って消します。
  • 線香を供える:線香を焼香台の灰に静かに挿します。この際、線香を焼香台に対して垂直に近い角度で挿入します。
  • 再び合掌して一礼:線香を供えた後、再度手を合わせ、故人に対して深く一礼します。
  • 焼香台から離れる:一連の手順を終えた後、静かに元の位置に戻ります。

曹洞宗の数珠の使い方

曹洞宗の数珠は大きく分けて「本式数珠」と「略式数珠」の2つがあり、本式数珠は宗教によって数珠の数が決まっています。曹洞宗の場合、数珠の数は108個です。

略式数珠はどの宗派でも使用できます。数珠は左手にかけ、右手を合わせて合唱します。

曹洞宗の言葉選び

曹洞宗の葬儀においてのお悔やみの挨拶と避ける言葉について解説します。

曹洞宗のお悔やみの挨拶

曹洞宗におけるお悔やみの挨拶は「心よりお悔やみ申し上げます」「謹んでお悔やみ申し上げます」となります。他の仏教宗派でよく使う「ご冥福をお祈り申し上げます」は使いませんのでご注意ください。

曹洞宗の避ける言葉

曹洞宗の葬儀で避ける言葉は、他の仏教宗派と同じで「いよいよ」「ますます」などの重ね言葉や、「死ぬ」「亡くなる」などの直接的に死を連想させる言葉は避けましょう。

曹洞宗の葬儀の違いを抑えておきましょう

曹洞宗の葬儀は他の仏教宗派と違いがあります。事前に葬儀の内容を把握しておくことで、スムーズに執り行うことができます。

また、曹洞宗の葬儀の意味を知ることで、より心を込めて故人を送り出すことができます。葬儀は故人の一生に一度の儀式です。ご遺族、参列者が敬意をもって、宗派に沿った葬儀を執り行いましょう。

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